自画像

 私は、人間の身体におけるかたちへの興味や、その美しさの追求で、人物を造形している訳ではなく、何かに情熱をもった人、目的に向かってまっすぐな人に興味をひかれ、例え、それが、世間一般に賞賛されるようなものではなかったとしても、気違いじみたものだとしても、その姿に美を感じます。 そして、そのような人は、他者とは比べることのできない自分独自の幸福のかたちのある人たちで、私は、そのような人をみると、愛と幸福を与えられます。
 私が、人物を造形するにあたっては、その人柄、人格、表情の一瞬のくもり、顔のおくに刻み込まれた、今までの人生、経験、心のなかにあるヒーローなるもの、つまりその人のもつアイデンティティを想像し、その先の人生をも感じ、その人の一生涯の時間を一つの物語として読みとり、その情報によって造形しております

 
上記のなコンセプトのもと制作している私の人物像は、内面の情報により、表面を形成している。
私は、表面的になりたくないと、その像に内面性を求めるが、私のつくる人物像は皆、中身は、空っぽだ。
その身体をいくら刃物で切り刻んでも一滴の血も出てこないだろう、それはまるでダイビングスーツのようにゴム製でできた人のかたちをした着ぐるみのようにも感じる。
この自画像は、そのゴム製の着ぐるみのなかに入り、私が私の制作する人物になり、その人生を味わおうとする私の欲求を表現したものです。