タッチと痕跡

 僕は、芸術作品においてタッチとはかたちを形成するためだけの道具だと長い間思い込んでいた。そのため、僕は、かたちを創るためだけのものであるのなら不必要であると、僕の創造の行為においてそのタッチとやらを自らの指で強く押さえつけ、消そうとした。なぜなら、無から有が生まれることこそ芸術の本来の姿であると信じていたし、かたちを形成するために必要なカタチというのを嫌っていたからだ。 ただ、そうする行為が、僕の作品の特徴でもあるかのように最近は感じている。  だが、その今までの僕の考えを覆し、別の境地へと案内してくれた作品につい最近、出会った。その作品によると、どうやら、タッチとは痕跡ともなり、霊性が宿りうるようだ。