音楽

とてつもなくながくながく続く音楽を、僕は独りで歌っていた。    いつの頃からだったか忘れたが、隣りで独りの女の子が一緒に歌っていたことに気がついた。そのふたりの声域はソプラノとバスの10倍は離れていたし、まったくの反対同士で背中合わせのようだった。  僕は、その女の子から出てくる声におおいに興味、尊敬、憧れをもち、そして、ちょっと、まねしてみたりもした。 僕は、そんなことを長い間、続けているうちに、生まれたときから持っていた自分の声を忘れてしまいました。    
もう二度と、僕は、嫉妬しないし、自分にできないこと、ないものを認める。そのうえで、いま、僕に、残っているものを大切にする。